ゲーム試案

 最近やってみたいのはしっかりとしたストーリーの構築。内容がどうとかテーマ性がどうとかいう話ではなくて、話として展開を追える程度の強度は持った屋台骨のこと。荒唐無稽でもいい。荒唐無稽の方がむしろいい。
 もし一本、話を書くとしたらどんなのがいいか。せっかくだから先日言っていたサウンドノベル的なものを意識して考えてみよう。夢日記の話をしたよね。夢の中のように理不尽な始まりがいい。なんか知らんけど自分がF1レーサーになっていてコースを爆走しているところから物語は始まる。「物語は始まる」て。壮大なRPGの幕開けみたいだけどそういうのじゃない。轟音の中、意識が始まって、突然我に返ったもんだから運転がおぼつかなくなると思いきや別にそういうわけでもなくて普通に運転している。コーナリングとかも器用にこなせてしまって「なんじゃこりゃ、俺は天才か」みたいに思う。ああ、主人公は男かな。せっかくだから女にしましょう。「何これ、あたし天才か」。ピットインしてタイヤなどが交換されるのかと思いきや、そのまま降りて、パーティに招かれて赴く。ハハハ。まだ優勝してねえのに。そこでどうしようかな。なんか会長みたいな人が壇上に行く。金色の衝立みたいなんの前にマイクスタンドがあって胸に赤色の花を差している。この辺を緻密に書いた方がよさそうだ。いかにも何かの式典のような、分かりやすい重役的な人たちが作り笑いで、白いクロスがかかった丸いテーブルの周りでスピーチした人の方を向いて力ない拍手をしているみたいな。会長みたいな人が主人公・・・女だから花子と仮称しよう、花子のことを名指しして褒め称える。みんな顔だけ花子の方を見て、また小気味よい笑いを浮かべて拍手をする。花子は困惑してしまうけど状況がよく分からないので大人しく視線の集中を甘んじて受け入れる。ちょっと黙礼なんかしちゃってね。本人はたまたまうつむいた時に顔が下を向いたのがそう見えただけだということにしようと思っている。
 ゲームというからには選択肢ぐらいはあっていいと思うのだけど、ここで一つ、どういう性格のゲームであるべきか。今さっき、主人公は「そう見えただけだということにしようと思っている」と書いたけど、この場合の主人公は、普通の登場人物と同じようにアイデンティティを持っていて独自の考えとかがあるわけだ。でもプレイヤーの選択肢によって決断を下させることができるから、他のキャラと比べると特殊である・・・というが本当だろうか? 多世界解釈を行なうなら、主人公の行動や言動においての分岐を選択しただけに過ぎないから、他の登場人物の行動や言動も同じように、選ばれた選択肢の影響を受け、主人公も同様であるので、特殊性はないのではないか。上の次元に居るプレイヤーはたまたまその部分での分岐を見せられているだけなのだということ。じゃあ主人公というものを特別視しなくてもいいのね、というわけでもなくて実際にその「たまたま」分岐が主人公の行動や言動をトリガーにしているという構造は有意であり看過できないということもできよう。事実、プレイヤーは主人公に特別さを感じるはず。上記のような解釈を隠蔽して仮想的な特権性を主人公に感じるはずだし、一人称なら自己の内面描写を大量に見せられ、万物の在り様は主人公を通して説明されるのだから、他の登場人物と同じであるわけがない。では主人公の一切の行動を封じてしまって、プレイヤーが主人公の全てを統率するようにしたらどうだろう? あのう、今俺がやろうとしているのは、主人公が完全にプレイヤーの分身となり、あたかもプレイヤーが仮想世界内で振る舞っているかのように仕組むことができるかということで、重要なのはプレイヤー:主人公間に同一性を持たせる上で障害になる要素を完全に排除できないかということであって、プレイヤーの自由さではないので選択肢だけでコントロールできるというインタフェースや展開の可能性の有限性は、A/D変換において量子化されたのだと片づけてしまっていいと思っている。しかし実際に全ての行動をプレイヤーがコントロールすることはできない。選択肢が出ない間も常に主人公は、小学生みたいだけど、息を吸っているとか生きてるとかいう選択をオートで選んでいるわけで、プレイヤーの意志が反映されることは原理的にない。考えてみればこれは量子化された離散的な選択肢を選ばされるという時点で違反しているので、ダメですね。限りなくプレイヤーのトレースみたいな主人公は、頑張ればできるのかもしれないけど、原理的にダメだったらそういう仕事に興味はないな。では正反対に、主人公はプレイヤーのことなどお構いなしに個性バリバリで、池に石を投げ込んで水面を波立たせるようにささやかな抵抗として選択肢で影響を与えることが許されるだけで、嘲笑うかのようにバカみたいに派手な展開でドスンゴスンともんどり打つという形式がよいでしょう。極端なのはいいことです。
 じゃあさっきの花子の路線でよろしいですね。途中で全然関係ないことになりました。くれぐれもご注意願いたいがこれはシナリオを組み立てる試案であって、こういうのを作りますという意味ではありません。念のため。続きはまた。