ドイツ語

 散歩していたら、お互いに顔は知ってるくらいの間柄の、ドイツ人でドイツ語を担当している先生に会って雑談することになった。前々から訊きたかったことを訊いてみた。ドイツ語にはなんで名詞に性別があるんですか。回答は、元ネタであるラテン語が既にそうだったからだという。じゃあラテン語にはなんで性別があるんですかと訊くと、ラテン語は分からないという。まあ確かにこの先生はドイツ人だが言語学者ではなく語学を担当してるだけの人だということを思えば、知らなくて普通だよな。俺が日本語の構造や歴史について訊かれても答えられんしな。それじゃあ、ドイツで新しい言葉が生まれた時はそれがどの性別になるかってどう決まるんですか、と訊いたら、それもよくは分からないという。なんとなくいつの間にか決まっているものらしい。例えば「津波」というものはかつてドイツ語になく、時代が進んでから言葉が入って来たわけだが、その際、日本語そのままの「Tsunami」となったそうな。それで「Tsunami」は男性名詞なんだけど、これがどのようにして男性名詞になったのかについて、先生は、「嵐」は男性名詞だけど「波」は女性名詞だし、どっちになるかは微妙だったはずだという。でも波というには荒々しいし、ということで男性名詞になったんじゃないかということだった。どうも既存の似ているものを参考にして決まってくるらしい。でも「機械」は女性名詞なのに「コンピュータ」は男性名詞だ。「計算」は中性名詞じゃないか。どうなってんだ! ドイツの人々は何か「この言葉は男性っぽい、女性っぽい、中性っぽい」というイメージみたいなものを持っていて、それに即して勝手に決まっていくもんなのかなあと俺は考えていたのだがそんな単純なものでもないそうだ。どういうことやねん。じゃあ、今は男女平等バカが世界中にはびこる時代ですが、男性、女性というような分類を言語に組み込んじゃってることについても怒って、全部中性にしろみたいなこと言ってるキチガイはドイツにおらんのですか、と訊いた。その先生はそういうのは聞いたことないという。そんなことしたらドイツ語はメチャクチャになってしまうとも。そりゃそうでしょうね。ただ「公務員」は男性名詞だが、女性もなるようになってきたので、議論がある、というようなことは聞いたことがある、とその先生は言う。じゃあやっぱり男性女性というのは、言語における形式にそういう名称をつけたというわけじゃなくて、ホントに性別的な意味合いもあるんやね、と思った。じゃあフェミニストとかは発狂するんじゃないの、やっぱり。日本にはない概念すぎてよく分からんわ。看護婦が看護士になったとかいうレベルの話じゃないんだろうなあ。