殻ノ少女

殻ノ少女 初回版

殻ノ少女 初回版

 ものすごく久しぶりにエロゲをやっているかと思えばそれは「殻ノ少女」という海のものとも山のものとも分からぬしろものなのであった。このウダった生活にメリハリをつけるためにという意気で俺はせっかくだから赤い扉を選ばずになぜかunknownゲームをプレイしているわけで意味わからんね。村上春樹読めよ。せっかく買った本も微妙にまたゴミの下層になりつつあったのだから俺はコレクターでしかないのだ・・・。
 そんでこのゲームなんだけどプレイの決め手はErogamescapeのPOV項目に「後味悪過ぎ」とか「鬱」とか「狂気」みたいなものが並んでいたという点でね、しかし俺は「沙耶の唄」や「SWAN SONG」ではなく「ゴア・スクリーミング・ショウ」を思い出さなくてはならないわけで、さらには「Steel」の、セーブデータだけが残ったフォルダを見つめる必要がある。「Love Letter」はまあ横に置いていいのかも知れん。
 これはいわゆるミステリというか、逆転裁判というか。選択肢を選びながら捜査をし、証拠などを的確に選んで行きながら事件を解明していくという探偵ものなのよ。プレイ途中というか1回BAD ENDは見ましたが、ううむ。俺はミステリは基本的に好きではなく脱-ミステリというかミステリの枠からハミ出して遊んでいる小説の方が断然好きなのさね。バカバカしいな〜と思うようなものがいい。だから本当に俺のような者が評価をするのは場違い感というか申し訳なさが漂ってしょうがないのだけど、ううむ。面白いんだけどな。江戸川乱歩にダンテに、あと誰だっけ。その辺りを想像すればよいのだな。あと京極夏彦か。幻影城と聞いて清涼院流水を思い出したら負けなんだろうか。なんでこんなに回りくどく要領を得ないことばかり言っているかというと、この作品は狂気とか鬱とかいうイメージを持たれているようだけど、俺からすると浅いというかぬるいというか、そういう感想を持ってしまったからなのだわ。かなり猟奇的でウッヒャアというシーンが出てきたりするんだけど、やっぱり基本的に善を志向しているんだなあ。そういう次元を超越しねえかなあという欲求があるんだ。個人の損得を超越した動機で行動するにはさ、やっぱり典型的な善が敷かれた、どっかで山ほど見たような心理では浅い。例えば友人が不幸に見舞われているから優しい言葉をかけるとかさ、悲しい境遇を聞いて何か言ったりして心の拠り所をその場でサラッと変えたりするとか、浅いし紋切り型だと思いませんか。それほどの問題を抱えて悩んでおきながら、他人とのものっすごく短いコミュニケーションで革命的なことが起こっちゃうと、お前それについて十分な思考を今までやってなかったのかよという怠慢とか、どっかで聞いたような「君は君でいるべきだ」みたいな何も言ってないような気休めで安心しちゃう浅はかさなぞが、目に付いてしまう。このゲームも根幹がそういうところにあるんだよな。そういうバカは徹底的に惨めに描くとかさ、逆に分不相応な権力とかを持つ立場に置いて強制的に思考させるとかさせないといけないと思うよ。どうですか。これはそこまでマイナーな欲求ですかね。すっげー平易な言い方をすれば勧善懲悪飽きたな〜ってことです。だってそういう作品でベースになっている善って、膨大な数の作品から参照されている共通のリソースじゃないすか。飽きちゃわんかなあ。でも今後は科学主義が敗北したと見なされて衰退していって血液型診断とかその手の神話がさらにどんどん蔓延していくと予想されているわけでしょう。ダメじゃーん。まあまだやるけどね、このゲームは。上述の意味じゃなく面白いかもしれないしね。