アハーン

 好事魔多しとは言ったものだが本当に世の中には他人の足を引っ張ることしかしないやつが多数いる。憤懣やるかたない。こんなことに苛立ちを覚えるのは俺がそういう点において異常に真面目だからなのだろう。人間、ごく限られた領域においては、その他の領域に対するそれから逸脱して真面目であったり不真面目であったりする。陳腐な言い方をすれば「譲れない一線」というやつだろうか。そう表現すれば聞こえはいいが、一様に成長してきたわけではない個人それぞれのねじれというやつだ。
 俺は、自分以外のものに直接的な関係を持たずに価値を創出しようとする人の姿勢、あるいはそうして創出されたものに対して、それを阻害する連中が許せん。そういうやつは死んでもいいとさえ思う。なんだったら殺してやってもいいぐらいの心持ちだ。それは、世の中のほとんどの人間同様、自分には特別な才能がないことがだんだん自明になってきたという残念な事実へのコンプレックスに他ならないが、それさえも理解せずにいるやつらを許容できなくなってきている。才能がない者同士、ぷよぷよみたいに消えるような感覚で、ぶっ殺してやっても構わんのではないかと思う。テロリズムに近い考え方なのかもしれない。
 とまあ息巻いてはみても、そりゃあ俺の頭ん中には俺の考え方に対する反論など湧き起こるわけもないので、そうだそうだ、と肯定しまくって鼓舞された末に木に登っただけの話で、ちょっと冷静になりゃあ、あんなアホどものために損するなんてまっぴらごめんという至極妥当な結論が甦るのだが。甦るって、読みを四文字も担っててすごいな。ほとんどオートマティスムじゃないな。