著作権なあ

 最近、ニコニコ動画のランキング機能をめっきり利用しなくなった。かつての俺は本日マイリストのランキングを上から全部視聴し、コメントこそ滅多につけないものの、ほとんどの動画についてどのようなものか説明することができるぐらいのものだったが、いつしか気になった数個しか見なくなり、今では1位が何だったかな、という程度になっちゃった。
 かといって全く見なくなったのではなく、最近では実況つきのゲームプレイ動画を検索しては、面白そうな人の実況なら観るという使い方をしている。
 d:id:yarare-jもプレミアム会員をやめようかというようなことを時折言っている。俺と彼に共通する感情は「飽き」だ。ニコニコ的なものにはごく平凡な感性を持っている我々は、当初はそれがバカで狂っているだけで面白かったものだが、一年ほど経った今、単なるバカさだけではおいそれと笑わなくなってしまった。求める水準が上がってしまったのか、あるいは単純に「ジャンルに飽きた」のか。
 俺の調べた統計によると、ここ二か月ほどは再生数もマイリスト数もはっきりと分かるほど減少している。しかし、これはアニメの削除によるものだ。実質、放送局の一つとなっていた地位が失われちゃったから。
 動画の削除が著しい。マリオ関係はあらかた消えてしまったようだし、ポケモンの実況も消えた。アニメのMADも物によっては即座に消される。将棋も消える。テレビ関係はほぼ消える。生き残っているのは京アニVOCALOIDや東方とドナルドとアイマスぐらいのものだ。
 ピークは過ぎたという空気をひしひしと感じる。去年は友人と「こんなのいつまでも続くわけがないよなあ」と話していたものだが、気がついてみればもう熱狂は去ったのかもしれない。ゲームとかアニメとか、広く知られているものが題材にないと盛り上がるのも難しいのに、広く知られているものはほとんどが知的財産権の侵害になってしまって著作権法に抵触する。今までもそうだったけど、最近になって、様子を見ていたらしい各権利者が(まさかニコニコに上がっているのを知らないなんてことはないだろう)、腰を上げて積極的に削除申請をしているように思う。これはVIPPERに代表される通報者が増えてきて、ニコニコや権利者に通報して削除を促す動きが拡がっているという噂もある。これは知的財産権の侵害に対しての義憤というよりは、みんなが盛り上がっているものを潰すという快楽も作用しているように思うが、そうであってもやってること自体は全く正当なので非難もできない。マイケル・ジャクソンが他方からあることないことで訴訟されまくっているのに似ていると感じた。
 全ての原因は知的財産権だよね。元凶とは言いませんよ。作った人が儲けるのはいいことだと思う。でも、広く知られて、コミュニケーションツールのような存在になっているものが、全てどこかの権利者に支配されているというのは、相当コミュニケーションに支障を来たすよね。実際、ニコニコみたいなところでは、ダメと言われて、おもちゃを取り上げられまくっているわけですからね。ダウンタウンのガキ使の24時間鬼ごっこで、浜田とココリコと山崎が遊んでいた人生ゲームを、松本がグチャグチャにしてしまった後「死ねーッ!」と言って去って行ったシーンがどうしても想起される。もちろんそのゲームは元々保障されたものではないとみんな分かっているんだけどね。
 これを正当化したいなら、必要なのは法整備か権利者との談合しかないけど、法律は著作権法非親告罪化とかダウンロード違法化などなど、むしろもっと規制する方向に進んでいるし、権利者と合意できているのはJASRACぐらいですよ。しかもそれも、原曲そのまま使用とかPVうpとかはダメです。演奏してみたとか歌ってみたならいいけど、カラオケ音源などを原曲から抽出したらこれもダメ。著作隣接権を持っている人の許諾を取ればいけるけど、運営がそんなのまでやってくれるかといえば多分くれなくて、やっぱ消されるでしょう。
 JASRACのゲームバージョン、アニメバージョンみたいな組織があれば話は早いんだけど、そんなの今から作るわけにもいかないしね。知られるだけ知られて、でもそれを共有してみんなで楽しもうとしたら違法でダメなのかい!と思わないでもないですが、アニメやゲームを作るのにもかなり金がかかりますからね。共有するための技術だけが発達して、それを還元するためのビジネスモデルというか考え方や、法律の整備が追いついていない。っていうか、還元するような金が存在しないんだと思われますよ。元々コンテンツを動画で共有なんてすごいことはできなかったのであり、そんなことができたら代価としてユーザがそれなりの利用料を払うべきなんだけどニコニコは基本無料だしね。いまだ赤字のプロジェクトに、即時的な夢物語を期待するのも酷な話です。将来、俺らにとって良くなればいいね。