恋空おもしろいだろ

 恋空の前編を読んだんだけどさ。これ、すっげー面白いと思うんだよな。話の筋がものすごくしっかりしているんだよ。目まぐるしいぐらい出来事が起こりまくるので、その辺のダラッダラした小説よりむしろ刺激的なんだよ。何より心理的な描写がリアルだと思うのだよな。美嘉という女の子の一人称でほとんど書かれているお話なのだが、その周りの人間の振る舞いにしてもさ、メチャクチャ簡単に心変わりするというか、昨日まで敵対していた人間が急にコロッと態度を変えて、親友ばりになるとかさ、恋愛が絡んだ若い女の考え方って、マジでそうだよな。中学の頃を思い出すわ。著者が実体験を基にこれを書いているのだとすれば、俺の過ごしてきた環境よりも三年ほど遅れているようだが(作品では高校が舞台)、権力的にアドバンテージ持ちたそうな女に、こんなやつ居たなあ。中学時代も誰と誰が付き合って、みたいなことに人一倍敏感で、高校受験が終わったらさ、高校のレベルが高い奴に乗り換える、なんてことを試みてる女、居たなあ。うちの中学からはトップ校には10人行ったんですけど、そのうちの一人は俺なんですけど、自慢ですけど、やたらアプローチかけられ始めましたからね。一緒に行ったやつからもチラホラそんな話聞いてましたから、意図は前述の通りだったと思うんだよ。その世代の女がみんなそうだなんて欠片ほども思ってないけど、こんなやつも居るのは確かなんだよな。その辺の機微っつーか、生々しさっつーかさ、それは克明に描かれていたね。はぁ、おもしれ。しかもこんな年齢からレイプやら流産やら経験して、挙句には援交未遂とかヤリコン未遂にまで巻き込まれて、明らかに通常の生活からは逸脱してるんだけど、普通に女子高生やって、しかも純粋な部分がしっかりあるというのも、妙にリアルなんだよな。やっぱ風評ってアテにならんわ。至高の名作とは言わんが、東浩紀が賞賛していたように、面白いし感動しうる強度を持った作品であると思う。読みもしないでレッテル貼りだけはしたいというパッパラパーが世の中にどれほどあふれかえっているのか、っていうことだよ。うし、後編を読んで、また感想を書きたいと思う。