ウイ〜ルス

 いよいよ、世の中にハビコル悪意、いや、人間に巣食う悪意と、それに気づかない人々との距離が縮まってきましたね。というと非常に中二っぽくて気に入る。ああ、文章を書くのは久しぶりだな。久しぶりというキータッチにおける指の動きが久しぶりだ。
 というのも、ウイルス作成ですよ。誤認逮捕で騒がれているようで。いやあ、とうとうウイルスという昔からネットに棲息していた者であれば一度は慄いた覚えがあるであろう、あのアレが、ネットに棲息していたわけではない人にとっても脅威になってしまいましたね。しかもそれは、単純にコンピュータが侵されるとか、情報が抜かれるとかいう、正面玄関から堂々と突破してくる形ではなく、公僕の手を借りて、濡れ衣を着せて逮捕させるという形で。これは十年やそこら昔では考えられなかった、任意の端末から、その端末の所有者が犯罪となるような行為をしたように見せかけるウイルスだが、何もテクノロジーの進歩によって実現可能になったものではなく、むしろしくみ自体は超単純で、それを取り巻く環境が変化したから成り立つようになったしろものだ。
 日々、発生している交通事故の件数を、ちょいと増やすような存在としても、インターネットが機能し始めてしまった。ウイルスを作成した人物は、面白がっていることだろう。完全な違法行為であり、この国に住む国民として、そのことについては誠に遺憾であるが、その心理は理解できる。
 知りもせん人間が、自分のせいでひどい目に遭うのを楽しむことは、特段おかしなことではない。まあ、趣味の問題というのは当然あるが、趣味の問題よりだいぶ上のレイヤーで、人間として、人の不幸を楽しむ感情というのは備わっているのだと俺は思う。でなければ「メシウマ」などという言葉が誕生しているはずがない。
 しかしそうではなく生きている人にとっては、そんな悪意の接近は、寝耳に水だろう。
 悪意と人々の距離が縮まったというのは、そういう意図である。
 昔読んだエロ漫画で「人生、下衆な方が楽しいですね〜」とか言いながら幼女を犯しているやつがあったが、まあ幼女は犯さないにしろ、人間、こんなもんだよなあと述懐するくらいはする。
 酔ってます。